今回は将来的に一つのスポーツだけに専念する時期についてお話しします。

 例えば・・・一卵性双生児の兄ライズ君と弟アップ君がいました。ライズ君は幼稚園の頃から週に 1回テニススクールに通っていて、かたやアップ君は幼稚園の頃はあまりテニスに興味が無く、兄がテニスに行っている間、野山や公園で走り回って遊んでいました。ライズ君は小学生になり、スクー ルを週2回に増やしました。アップ君は色々なことに興味があるので、野球やサッカーなど季節や月によって色々なスポーツを行い、テニスはたまにするくらいです。ライズ君は5年生になって週5回スクールに通うようになりました。アップ君も色々とスポーツをやった中で「テニスが楽しい」と感じた為、兄ライズ君と同じように週5回テニススクールに通うことになりました。ライズ君とアップ君がテニスの試合をすると、小学生の間、アップ君はライズ君に全く勝つことができませんでしたが、中学生になって時々兄ライズ君に勝つようになり、高校生になったときには逆にライズ君はアップ君に勝てなくなってしまいました。
 これは完全に架空の話ですが、この例で出てきたアップ君のように、私個人の意見としては、単一種目を選択するのはだいたい10歳前後くらいが良いと考えています。なぜなら10歳位までの多種多様な運動の経験が運動神経の良し悪しを決定づける為、専門種目の選択はその運動神経の土台が出来上がってからでも遅くはないと考えるからです。また、10〜12歳に迎えるゴールデンエイジ(即座の習 得)はそれまでの土台作りがあってからこそ発揮されるものだからです。
 ただし、10歳という年齢が絶対的ではありません。仮に、やりたいスポーツが決まっている場合や将来プロを目指している場合でも、幼い頃から始めても当然良いのですが、頻度や他のスポーツとの比率が重要で、一つのスポーツだけをするということに問題があります。一つのスポーツを継続していればある程度上達はしますが、応用力や新しい技術の習得速度が他のスポーツを経験している人と比べて劣る傾向にあるので、どうしても越えられない壁が出てきたり、ある程度のところで成長がストップしてしまう可能性があります。つまり、10歳くらいまではそんなに焦って決めなくてもいいということです。
 幼児期の単一スポーツの選択は、どうしても保護者の意向が強くなる傾向があります。子ども自身が本当にやりたいスポーツが見つかってからでも遅くはありませんので、保護者はそれまでにスポー ツの土台となる環境を整えてあげてください。今や世界トップクラスのテニスプレーヤー錦織圭選手も、テニスラケットを握ったのは3歳からだそうですが、同じく3歳からスイミング、5歳からサッカーを始め、7歳から野球もしていたそうで、テニス一つに専念したのは12才からだそうです。ゴルフの石川遼選手なども様々なスポーツを経験しているトッププレーヤーです。
 環境や、その他の要因もありますので、様々なスポーツを経験すればみんながプロになれるというわけではありませんし、一つだけのスポーツ経験でプロになる選手もいますので、単一スポーツに専念することが絶対悪ではありませんが、スポーツ経験の豊富さはどんな志向(プロから生涯スポーツ に至るまで)においても重要であることに変わりはありません。